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ノンマルト通信Express

フリーランスで自由自治

夜明けのスパゲッティ

所感

昨晩は知らぬ間に眠りに就いていて、ふと目を覚ましたら夜中の2時過ぎだった。まだ眠気はあるので体を横たえていたが、なかなか眠れそうにない。

生活の不規則は今に始まったことではない。夜中に作業をして朝方眠りに就くなんてことは、もう5年以上続いていると思う。仕事の少ないフリーランスなので、何とかその都度やり過ごしてきたが、睡眠は自分の意志では儘ならない。

頭の中を、色々な記憶が駆け巡る。以前、朝早く出発しなければ間に合わない仕事を受けたことがあった。準備万端で布団に入り、睡眠導入剤を服用したが一向に眠れない。

目的地に着くまでの渋滞の光景が瞼に浮かんできて、心がせわしなくなる。午前5時にセットした起床時間がどんどん迫り、心身が回復できない焦りでイライラしてくる。

結局、午前3時を過ぎて睡眠を諦めた。薬の作用でフラフラした感じは残る。「早めに出発してゆっくり車を走らせようか」「荷物がかさ張るが電車で移動しようか」、あれこれ考えながらボーっと過ごしていた。

簡単な食事とシャワーを済ませて出発のチェックをしていると、突然電話が鳴った。朝早くに誰からだろうと受話器を取ると、これから会おうとしている客の声だった。

一方的にペラペラ喋り、要は仕事の依頼をキャンセルする連絡だった。「この野郎、ふざけやがって」と内心ムカッとしたが、元々嫌味な客だったので助かったという気もしていた。

スーツを脱いで布団に戻ると、なぜか安心感が湧いてきて眠りに就くことが出来た。収入が目減りする不安や怒りよりも、世間とシャットアウト出来る安心感の方が僕には貴重だった。

あれは震災前の出来事なので、確かに5年以上前から僕の生活は不規則であり、仕事のスランプが続いている。長過ぎるな。人生は意地悪なので、言葉で行先を教えてくれない。人に散々頭をぶつけさせるだけで、自分で勝手に気付けと突き放す。

夜中の2時過ぎに体を横たえながら、過去の出来事が浮かんでは消えていった。楽しかった出来事よりも、イヤな思い出が塊の様に湧き上がる。怒りや悲しみは、心というよりも肉体に沁みついて簡単には消えない。

そのうちに空腹を覚えた。眠れば朝方までごまかせるが、神経がだんだん冴えてくる。起き上がり、台所でスパゲッティをつくって食べることにした。蕎麦を茹でるより時間は掛かるが、蕎麦よりもスパゲッティの方が腹持ちがいいので常備している。

街が寝静まっている中、一人スパゲッティの麺を茹でていると何だか可笑しくなってきた。出勤時間を気にせずに夜中に食事が出来るのも、今日も僕には仕事が無いからだ。

お金の遣り繰りに困っても、食事だけは欠かしてはいけない。空腹は益々不安を募らせる。悩んでいる時こそ、食事で気分を回復させる必要があるのだ。

コーヒーを飲みながらパソコンに向かっていると、カーテンの向こうが白んできた。車の行き交う音も聞こえてくる。午前6時過ぎ、このあと僕は再び布団に入ることも出来るし、自転車に乗って公園に行くことも出来る。貧乏にも自由はあるんだな。

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