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ノンマルト通信Express

フリーランスで自由自治

今宵の酒は『紫薩摩富士』

お酒

季節も涼しくなってきたので、バーボンのコーラ割は一休みすることにした。通年楽しめる酒は、やはり芋焼酎だ。

もちろんお酒の種類は多く好みも様々だが、日持ちがして気軽に飲める酒は焼酎が筆頭だろう。原料によって味の傾向は変わるが、近年の芋焼酎は癖が減って甘く飲みやすい。

どの酒のジャンルでも、普通価格帯は雑味が生じるのが常である。ところが1000円前後が標準価格帯の芋焼酎では、どれも無難にごまかしが効くような気がする。寒い季節には、お湯割りで体を温めることが出来るのも大きな利点だろう。

銘柄が多く、酒蔵のウンチクに耳を傾けるのも楽しみのひとつだ。酒の味は、物語で色付けされる要素が大きい。ただ、商品名がハッタリ臭い処は九州人の気性だろうか。やたらと文学的で伝統を匂わせる名前を付けたがる。

焼酎は拝んで飲む酒ではない。気軽に飲んで酔えるからこそ有り難いのだ。九州人よ、君も僕も同じ大衆人なのだ。

その点、『薩摩富士』という銘柄は響きが良くて潔い。全国各地に○○富士は沢山あるが、薩摩富士は音感がいい。地元の定番酒というイメージで安心できる。

晩酌の嗜みは、プレミアム酒と相容れない。大仰な『野を走る大魔王の100年の誘い』でなくてよかった。

さっそく口火を切りストレートで飲むと、いつもながらの芋焼酎の味だ。おいしいけれど特徴はない。お湯割りにしてみたが、やはり個性は感じない。豚骨ラーメンと同様で、どれもおいしいく納得できるが、水準を突き抜けるのは至難の業なのだろう。

試しに氷を入れてみた。お湯割りより甘さの余韻があり、更に飲み易くなった。紫芋の特色が、ロックで際立つようになった。こうなると盃が進む。この記事を書きながらも、五合瓶の括れを通り過ぎてしまった。

バーボンやブランデーでは、体が抵抗してそう易々と量はこなせない。正にこの飲み易さこそが、芋焼酎の魔界の分岐点だろう。

此処で打ち切るのも寝酒に注ぎ足すのも、魔界では放任主義だ。さんざん魔界で苦しめられた僕は、もう一注ぎして瓶を戸棚に仕舞った。合間に水を飲むことも忘れない。

シングルモルトと付き合うには敷居が高いが、芋焼酎は僕と伴奏を合わせてくれる。酒歴20年以上、若き日の失態がこそばゆい。これからも酔い心地で、銘酒の探訪を続けたい。

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