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ノンマルト通信Express

フリーランスで自由自治

安旨焼酎『鬼追い』は、薩摩のグレンリベット

お酒

やまやで見つけた芋焼酎『鬼追い』がイケる。五合瓶で税込み810円と低価格帯だが、自信たっぷりの店頭ポップを信じて購入してみた。焼酎の棚には見慣れた商品からプレミアム品まで豊富に揃っていたが、「甘口、お湯割りがお勧め」のポップ文字に、僕のスカウターが反応した。

僕が芋焼酎に求める味は甘さだ。甘く余韻の残るふくよかさがあれば、一日の疲れを和らげてくれる相棒になる。ラベルも赤紫を基調に金文字の鬼追いが映えて、他社の赤銘柄のセンスと遜色がない。値段が安いので敬遠する向きもあろうが、僕には掘り出し物の予感がした。何しろやまやは、ベンチマークが950円で買える店なのだ。

開封してビンに鼻を近づけると、甘酒のような香りが伝わってくる。ストレートで一口含めば、余韻のある甘さが喉を潤す。身体がポッと暖かくなり、「これは掘り当てたな』と自分の嗅覚に満足した。それにしても甘い。蜜の様な甘さだ。原材料に含まれる米麹由来の甘さなのだろうか。ロックやお湯割りでも楽しめるだろう。それでも、ストレートでゆっくり飲む方が、このお酒の真価に気付けると思う。

甘い蜜の様な余韻に覚えがある。どこかで飲んだ酒に似ている。それは、シングルモルトのグレンリベットだ。ウィスキーを愛飲していた時分で、竹鶴以上ローヤル未満の価格帯の逸品を探していた。国産のブレンデッドウィスキーの味に飽きてしまい、シングルモルトの蘊蓄に傾倒していた頃である。紙箱に収められたグレンリベットはいかにも舶来品を感じさせ、味もさることながら所有欲もくすぐられた。

まさか810円の芋焼酎が、スコッチの雄に伍する味わいを持つとは、洋酒通は認めたくないだろう。僕もミネラルウォーターをチェイサーに飲んでいた頃は、芋焼酎に見向きもしなかった。それが今では、戸棚に芋焼酎を常備している愛好家だ。芋焼酎はウィスキーより度数が低い分、ストレートで飲んでも口中を刺激しない。味そのものを味わえる。

意外な事に量は減らない。おいしい酒は少量でも満足出来るので、盃を重ねる必要がない。並以下の酒は味に満足感が無いので、結局量を飲んで気持ちをごまかしてしまう。鬼追いというから悪酔いを連想するかもしれないが、ちっとも頭は痛くない。経験上、甘い酒は自制が効かず危険なのだが、この酒はシングルモルトの様にゆっくり味わえる稀有な芋焼酎である。

それにしても、鬼追いというネーミングは消費者に要らぬ先入観を植え付けると思う。蔵元の位置する郷土の伝統行事の名前が「鬼追い」らしい。日本酒の鬼ころし同様、安酒に鬼を付けられては鬼も迷惑だろう。鬼が楽しく満足気に飲める酒があってもいい。いっそうのこと、「鬼正宗」「鬼白波」「鬼魔王」なんてどうだろう。

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