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ノンマルト通信Express

フリーランスで自由自治

『力士金撰本醸造』一升瓶を買う

お酒

先日カップ酒で買った力士の飲み口が良くて、今回は一升瓶で買ってみた。埼玉の地酒ではあるが、西武線沿線の店ではあまり見かけない。代わりに飯能の天覧山や、青梅の澤乃井は、スーパーでも取り扱っているところが多い。

かつてはテレビCMで名を馳せた銘酒だが、マーケットは絶えず動いている。味には定評のある老舗なので、埼玉北部の酒店では、今でもよく出回っているのだろうと推測する。

酒選びで悩んだなら、やまやに行けばとりあえず何か見つかる。力士が無ければ、大関でもいい。スタンダードな本醸造が飲みたいのだ。

清酒コーナーには、一升瓶の陳列棚が広く取られて、幸いすぐに力士を見つけ出した。金撰と銘打った本醸造一升瓶を1500円代で買えた。

広告の影響は大きなもので、子供の頃に見たテレビCMの音と映像が、未だ脳裏に残っている。相撲取りの化粧まわしを意匠にしたラベルを見たとき、懐かしい再会を果たした気分になった。

名所・銘品・郷土愛の少ない埼玉県だが、酒造組合には30件以上の蔵元が名を連ねている。長閑な自然が残っており、消費人口が多いことも相まって、関東では有力な酒の産地である事を、当の埼玉県民は知らない。

埼玉に海はないが、多くの川があり、大小の流れが県土を縦貫している。また、荒川流域の橋を渡れば、どこまでも平たい関東平野を実感できる。豊富な水があって、米作りもできる土地が広がっていれば、酒を醸す土壌は揃っている。

前回のカップ酒は冷やで飲んだが、今晩は電子レンジで燗をした。徳利に半分程注ぎ、ラップは使わずにお猪口を被せて40秒、ぬる燗の出来上がり。

甘口が膨らみ、後味に余韻を残す。喉から胸元にかけて温まり、何だか安心感が湧いてくる。「旨くて安い」、晩酌の資格を充分にクリアしている定番酒である。

戦後、米不足の折には粗悪な酒が市場に出回り、日本酒の評判が落ちた時期があったそうだ。「飲めば頭が痛くなる」、そんな時代が嘘の様に感じる程、現在の日本酒はレベルが向上している。

純米酒や吟醸酒も、気軽に選べる時代になった。味の方向性も多彩になり、ワインよりもフルーティーで、甘く飲み易い日本酒に出会った事もある。

それでも日本酒の本場所は、燗酒の出来栄えにあると断じよう。本来、日本酒は料理に合わせて飲む事を想定して、味づくりが追求されたのだと思う。魚料理の臭みを解消して、献立の間を持たせる役割も担っているのが日本酒なのだ。

原料が米なので、おいしい酒は口の中で噛んで味わいたくなる。冷や酒でカッと煽るよりも、燗酒をお猪口で一口ずつ嚙みしめたい。

昔の生活では暖房器具が乏しかったので、冬は燗酒で心身を温める実利的な側面があったのだと思う。

日本酒を文化として語る向きも多いが、普段の生活に根差した実用性があるからこそ、時代の変遷に翻弄されながらも、発展を続けているのだ。

古来より、「酒は百薬の長」と譬えられてきた。飲み過ぎの害は承知しているが、病院の薬を飲む位なら、家庭の常備薬として僕は日本酒を飲みたい。「胃袋を満足させて、あとは寝る事」、医学よりも僕は自分の経験則を優先する。

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