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ノンマルト通信Express

フリーランスで自由自治

洋食喫茶『キッチンサン』のチキンカツ定食

街探訪

仕事で新宿まで行ってきた。行きも帰りも道路が混んで、運転だけでも疲れる。日曜日の青梅街道はスムーズな流れだが、土曜日は平日よりも渋滞する。オンとオフの車が混在するからだろう。

仕事は半日立ち続けだったので、夕方にやっと終わった時には助かった気分だった。帰路の運転中に考えたことは、どこで食事を摂るかの一点である。食欲は、生存本能に根差している。

自宅に近付かないと安心出来ないので、都心では食べたくなかった。食後の運転はなるべく手短にしたい。結局、所沢に戻って市内の店に目星をつける事にした。

プロぺ通りを歩けば、幾らでも店は見つかるが、わざわざ駐車料金を払うのはイヤだ。駅前の西友では、2000円以上買い物をすると、駐車場が2時間分無料になる。

でも、今日はそれ程買い物の予定はない。新所沢駅の西友は、1000円以上で駐車場が2時間分無料になる。新所沢に進路を取った。

新所沢駅の西口は、スーパーや団地が広がり、ファミリー層の姿が目立つ。東口は個人経営の商店が連なり、年季のいった飲み屋街が控えている。プロぺ通り程の活気はないが、昔は夜遊びで鳴らした時期もあったそうだ。

東口駅前ロータリーの交番を過ぎると、昭和の面影を残す洋食屋がポツンと佇んでいる。界隈では知られた店らしく、いつ行っても先客で賑わっている事が多い。

味の良さと良心的な価格設定が、分かる人には通じるらしい。ファミレスしか利用しない人達には、敬遠してしまう店構えが、かえってマイノリティには好ましく見える。

洋食喫茶の名の通り、コーヒーやアルコールも出す。喫煙OKの昔ながらの社交場と云えよう。僕はタバコを吸わないが、昨今の嫌煙ムードはヒステリーに感じる。タバコが堂々と吸える店があってもいい。

お互いのテリトリーを超えて、相手を折伏しようとするから、無用な争いが絶えない。無関心もマナーのうちである。

この店に来ると、僕は決まってチキンカツ定食を注文する。店頭の黒板メニューに書かれた値段は540円、この店のサービスメニューであり、通もビギナーもどちらにもお勧めできる逸品である。

初めてこの店でチキンカツ定食を食べた時の感動が忘れられない。松乃屋のチェーン店も有り難いが、コックの調理した料理は一味も二味も違う。

たっぷりチキンが二枚重ね、肉の衣まで香ばしい。チェーン店の衣は脂っこく、塊はなるべく口にしたくないが、洋食屋の衣は正にパン粉の味わいを実感できる。

松乃屋のトンカツ定食はよく食べるが、残念ながら味噌汁を最後まで飲むことが出来ない。特にワカメは食べない事にしている。

キッチンサンの味噌汁は、自営業らしく家庭の味がする。熱すぎるのがちょっと難だが、具材もおいしく頂ける。

洋食屋らしくライスは皿に盛られて、紙ナプキンは紙ヒコーキの翼の様に折られている。ナイフとフォークでメインディッシュに挑むが、それでも忘れずに割り箸も付く辺りは、昭和の食堂らしい配慮だと思う。

僕はソースが嫌いで、肉料理や天ぷらも醤油で食べる。トンカツにあらかじめソースがかかっていると、途端にやる気を失ってしまう。

ところがキッチンサンのソースは、抵抗なく受け入れられる。ソース無しで注文して醤油をかけて食べた事もあったが、素直にソース付きで食べた方が角が立たなくていい。それ位、肉にソースの味が馴染んでいる。

洋食屋のメニューをたらふく食べて、お会計は540円。このサービス価格に感動した。以前、浅草の洋食屋に入ろうとしたが、値段が高過ぎて止めた事がある。高くて旨いは当たり前、安くて旨いから感激するのだ。

チェーン店では到達できない味覚が、街の食堂には残っている。利便性や雰囲気から個人商店は敬遠されがちだが、相性が合うと良い印象に残りやすいのはチェーン店ではなく個人商店の方だと思う。なぜなら、その存在はそこにしかないから。

自覚のあるなしに関わらず、自営業者はそれぞれが皆オンリーワンの存在なのだ。

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